健康保険は、治療費を支払うときしか使わないと思っている方も多いと思います。しかし、健康保険は出産や育児、葬式、傷病手当、高額療養などのシーンで絶大な効果を発揮します。
例えば、休日に旅行先で怪我をしてしまい、会社を休む場合。仕事を休んだ期間は、傷病手当金として給与の3分の2を最大で1年6ヶ月受けることができます。月収36万円の場合、約438万円(約8000円× 1年6ヶ月=約438万円)を受け取ることができるのです。
日本は海外に比べて、格段に健康保険制度が整っている国です。アメリカでは、自己破産の理由No.1が医療費が払えないからだと言われています。
この記事では、そんな健康保険の知って得する情報をわかりやすく解説しています。
健康保険とは?
健康保険とは、病気やケガをしたときの医療費をお互いに支え合う仕組みです。例えば、ケガをしたときの治療費は、健康保険が7割負担してくれ、自己負担は3割だけで良いのです。(治療費が1万円の場合、3000円を支払う)
健康保険制度の4つの種類
①協会けんぽ(全国健康保険協会)
協会けんぽとは、主に中小企業の従業員が加入する健康保険です。国からの補助金約1.2兆円と加入者からの保険料で運営されています。
保険料は、収入の平均7.6%(雇用主と原則折半)です。扶養家族の保険料が発生しないので、基本的には扶養家族にも自動的に保険が適用されます。
- 協会けんぽは、中小企業の従業員が加入する健康保険
- 加入者は3761万人
- 国から約1.2兆円の補助金を受け、運営している
②国民健康保険
国民健康保険とは、会社員や公務員以外の一般の国民を対象とした健康保険です。主に、自営業者や専業主婦が加入しています。
保険料は、収入の約10%です。扶養する家族にも保険料が発生するので、扶養家族が自分以外に3人いる場合は、4人分の保険料を支払うことになります。
- 国民健康保険は、一般の国民を対象とした健康保険
- 自営業者や専業主婦の加入者が多い
- 加入者は3468万人
③健康保険組合
健康保険組合とは、主に大企業の従業員が加入する健康保険です。大企業は、自社で健康保険組合を作り、その会社に務めている社員から保険料を徴収し、運営しています。
保険料は、収入の平均5.8%(雇用主と原則折半)です。扶養家族の保険料が発生しないので、基本的には扶養家族にも自動的に保険が適用されます。
- 健康保険組合は、大企業の従業員が加入する健康保険
- 大企業は自社で組合を作り、運営している
- 加入者は2914万人
④共済組合
共済組合とは、主に公務員が加入する健康保険です。公務員や私立学校の教職員が加入しています。
保険料は、収入の平均5.9%(雇用主と原則折半)です。扶養家族の保険料が発生しないので、基本的には扶養家族にも自動的に保険が適用されます。
- 共済組合は、公務員が加入する健康保険
- 公務員や私立学校の教職員が加入している
- 加入者は877万人
健康保険制度の知っ得情報
高額療養制度
高額療養制度とは、1ヶ月(1日から末日まで)の医療費が上限額(約9万円)を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。つまり、100万円の医療費がかかったとき、自己負担3割であれば、30万円を支払う必要がありますが、高額療養制度が適用されると、約9万円の支払いで済むのです。
高額療養制度を得して利用するためには、ポイントがあります。高額療養制度とは、「1ヶ月(1日から末日まで)の医療費が上限額(約9万円)を超えた場合、その超えた額を支給する制度」と言いました。この文章の「1ヶ月(1日から末日まで)」がポイントになります。入院期間の違う2つの例を使って解説します。
例1:ケガをして入院した
期間:4月15日〜5月15日
医療費:100万円(4月:50万円、5月:50万円)
支払い:約18万円(4月分の9万円と5月分の9万円)
例2:ケガをして入院した
期間:4月1日〜4月30日
医療費:100万円
支払い:約9万円
高額療養制度は、1ヶ月(1日から末日まで)の医療費が上限額(約9万円)を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。そのため、例1のように、4月と5月のまたがってしまうと、4月分と5月分の上限額がかかることになります。
一方、例2のように、4月だけの場合は、4月分の上限額を支払うだけで良いのです。その結果、例1に比べると半額になります。つまり、病気やケガをしたときのベストな入院日は月始め、退院日は月末が良いということですね。
適用:協会けんぽ、健康保険組合、共済組合、国民健康保険
出産手当金
出産手当金とは、出産のために一定期間会社を休んだときに給与の3分の2が給付される(1日当たり)制度です。給付期間は、「出産予定日前42日+出産予定日が遅れた分+産後56日」です。出産予定日が遅れた場合、その分もプラスで給付されます。
※出産手当金は国民健康保険の方は、受けられません。協会けんぽ、健康保険組合、共済組合の方のみの制度となります。
例:月収24万円の場合(予定日に出産)
約5300円(1日当たり)× 98日=約52万円
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産した子ども1人につき42万円が給付される制度です。受け取るためには、2つの方法があります。1つは、健保窓口に申請して、出産後にまとめて給付してもらう。2つ目は、病院に申請し、出産費用との差額を給付してもらう。
出産育児一時金の良いところは、42万円を丸々頂けることです。例えば、出産に30万円しかかからなかった場合でも、差額の12万円は給付されます。
適用:協会けんぽ、健康保険組合、共済組合、国民健康保険
埋葬料・葬祭費
健康保険では、埋葬料や葬祭費も支給されます。「協会けんぽ・健康保険組合・共済組合」と「国民健康保険」では、支給額が異なるので分けて解説します。
①協会けんぽ・健康保険組合・共済組合の場合
埋葬料・葬祭費:5万円
例:夫が死亡→妻などに給付
受け取り方法:協会けんぽ・健康保険組合・共済組合に2年以内に申請
※妻がいない場合は、親戚・知人などに領収書がある場合のみ実費が給付されます。
②国民健康保険の場合
葬祭費:1〜7万円(市町村によって金額が異なる)
例:東京23区 7万円、大阪市 5万円、名古屋市 5万円
受け取り方法:市区町村に2年以内に申請
傷病手当金
傷病手当金は、仕事中・通勤途中以外の病気や怪我で仕事を休んだ場合、給与の3分の2が給付される(1日当たり)制度です。仕事中・通勤途中以外の病気や怪我ということは、休日に怪我をしてしまった場合でも適用されます。
※傷病手当金は国民健康保険の方は、受けられません。協会けんぽ、健康保険組合、共済組合の方のみの制度となります。
3日連続で休むと、そこから支給開始となり、最大1年6ヶ月まで給付されます。勤務先の担当部署に申請すれば受け取ることができます。
例:月収36万円の場合
約8000円(1日当たり)× 1年6ヶ月=約438万円
付加給付
付加給付とは、健康保険組合などが、独自の規約で給付を行う制度です。大企業の多くが健康保険組合を自社で運営していますが、人間ドッグの費用を負担してくれたり、提携レストランの割引などの付加給付があります。
代表的な付加給付をご紹介します。
高額療養費を追加で負担
高額療養制度とは、1ヶ月(1日から末日まで)の医療費が上限額(約9万円)を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。高額療養費の上限は約9万円ですが、会社によっては、本来自己負担額である金額を負担してくれます。
例:プルデンシャル健康保険組合の場合
自己負担額上限:約1万5000円
例:ソニー健康保険組合
自己負担額上限:2万円
例:NTT健康保険組合
自己負担額上限:約2万5000円
出産一時金の増額
出産育児一時金は、出産した子ども1人につき42万円が給付される制度です。出産一時金を増額している会社を見てみましょう。
例:ソニー健康保険組合
(1児につき)20万円増額
例:観光産業健康保険組合
(1児につき)10万円増額
例:関東ITをソフトウェア健康保険組合
(1児につき)9万円増額
健康保険の2024年問題?
2024年には、人工の半分以上が50歳を超え、高齢化によって、国民皆保険制度が崩壊する恐れがあるとも言われています。これが2024年問題です。
特に、健康保険組合が赤字になっています。
なぜでしょうか?その理由は、健康保険組合で徴収したお金が後期高齢者医療制度に流れているからです。国民皆保険は、協会けんぽや健康保険組合が協力し合い、バランスを保っています。高齢化に伴って、バランスが取れない状況になってきているのです。
赤字に陥っている健康保険組合が増えることによって、下記の流れが予測できます。
※「協会けんぽ」は、国の補助金で成り立っているため、協会けんぽの加入者が増えれば、その分税金が使われ、国民負担が増えると予測できる
おわりに
いかがだったでしょうか?
健康保険は、治療費だけでなく、様々なシーンで活用できます。日本の素晴らしい制度なので、しっかりと理解して利用したいですね。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。