「投資をしている方」や「これから投資を始めたい方」も、必ず知っておくべき取引方法があります。
それは、「アービトラージ」と呼ばれる取引方法です。アービトラージを簡単に説明すると「取引所の価格差を利用して儲ける取引方法」と言えます。
アービトラージは、理論上必ず利益が出る取引方法でもあるため、「アービトラージは違法じゃない?」と疑問に思う方がいると思います。
そこで、この記事では「アービトラージの詳しい意味」から「アービトラージのやり方」までを解説しているので興味がある方は最後まで読んでみてください。
結論:アービトラージは違法ではない
結論から言うと、アービトラージを利用した取引は、違法ではありませんが、海外FX業者によっては、アービトラージを禁止としている業者があります。
なぜ海外FX業者ではアービトラージが禁止されているのか
アービトラージには、違法性はなく、トレーダーにとって一般的な取引方法と言えます。そのため、国内では禁止されていませんが、アービトラージの取引を禁止している海外FX業者もあります。
海外FX業者がアービトラージを禁止している理由は、「両建てアービトラージ」や「ボーナスアービトラージ」などを利用すると、確実に業者の損失につながるためです。
もし禁止されている「両建てアービトラージ」や「ボーナスアービトラージ」の取引を行った場合、口座凍結→出金拒否になる恐れがあるので、注意してください。
アービトラージは儲かる?
アービトラージは、資産の十分な取引量や流動性がある「FX」や「株式」では、それほど儲かるとは言えませんが、取引所ごとに価値が異なる「仮想通貨」では、戦略的に儲けやすいと言えます。
何よりも、アービトラージは、数ある取引方法の一つですが、トレードに関する知識をそれほど持ち合わせていない方でも行いやすいことが魅力的です。
アービトラージの意味とは
アービトラージとは、「取引所間で、通貨の価格差を利用して儲ける」手法のことです。
例:ある通貨が、取引所Aと取引所Bのそれぞれにおいて、異なる金額で売買されていたとします。
- 取引所A:買付(100万円)売付(99万円)
- 取引所B:買付(110万円)売付(109万円)
この時、Aで通貨の買付をし、それをBで売付すると、なんと9万円も利益を得ることができます。これがアービトラージを用いた取引です。
取引所ごとに価格差が生まれる理由については、下記の「アービトラージを利用できる投資」の仮想通貨の項にて解説しています。
アービトラージの英語の意味
アービトラージ(arbitrage)は英語読みなので、意味の違いはありませんが、日本語では「裁定取引」とも呼ばれます。
裁定とは「物事の理非を裁き、定めること」で、意味が転じ、異なる2つの取引所における価格差を利用して裁く取引、という意味合いと言えそうです。主に株式取引において、裁定取引と言われることが多いです。
アービトラージを利用できる投資方法
アービトラージを利用できる投資は、以下の3つです。
- FX
- 仮想通貨
- 株式
それぞれの投資において、アービトラージがどのように行われるのか詳しく解説します。
①FX
FX取引におけるアービトラージとは、「同じような価格の推移をする2つの通貨で行う」方法と「同じ通貨で、スワップ金利の異なる証券会社同士で取引する」方法が挙げられます。
同じような価格の推移をする2つの通貨で行う
価格の推移が、同じような動きをする2つの通貨があるとき、それらは全く同じ変動をするわけではないため、たまに価格の幅が生まれます。
その時に価格の安い方を買い、価格の高い方を空売りして、価格差が縮まったときに反対売買を行えば、利益を得ることができます。
証拠金をもとにして先に売付をすることで、後でその資産の価値が下がったときに買付をし、売付と買付の差額で利益を得るやり方です。
通常の取引では買付から行いますが、空売りを利用すれば、資産の価値が下がっても利益を得ることができます。
同じ通貨で、スワップ金利の異なる証券会社で取引する
スワップ金利が低い会社で通貨を売り、スワップ金利が高い会社で通貨を買うことで、買った方のスワップ金利から売った方のスワップ金利を差し引いた分の利益を得ることができます。
低金利の通貨を売付し、高金利の通貨を買付することで発生する、金利差の差額分の利益です。取引を決済するまでの間、毎日発生します。
②仮想通貨
仮想通貨取引では、取引所間での通貨の差額を利用して利益を得ます。
仮想通貨は、現時点で約15,000種類もあります。また、取引所ごとに仮想通貨の取引量がそれぞれ異なっているため、仮想通貨の価値に違いが生まれ、価格の差が生まれているのです。取引所ごとの価格の違いが分かりやすいため、アービトラージでの収益を狙うなら、仮想通貨での取引が合っていると言えます。
③株式
株式取引では、同じような価値の動き方をする2つの資産を使います。
例えば、X社とY社は過去数年同じような株価の推移を辿っていたとします。あるとき、X社の株価が下落し、Y社の株価はそのままという状況になりました。
このとき、X社の株式を買付し、Y社の株式を空売りすることで、アービトラージを行います。この後、X社の株価が上昇すれば、売付をすることで利益を得ることができますし、Y社が下落した場合も買付することで利益を得ることができます。しかし、X社の株価が下落し続け、Y社の株価は変動しないとなると、損失が生じます。
株式取引でもアービトラージを行うことができますが、そもそも会社の異なる株式に相関関係はないので、予想をすることが困難になります。
仮想通貨でのアービトラージの始め方・やり方
ここでは、アービトラージが効果を発揮しやすい仮想通貨での取引を例にして、アービトラージの始め方・やり方を解説します。
アービトラージの始め方
アービトラージの始め方は、以下のとおりです。
- 複数の取引所に登録する
- 仮想通貨の購入
まずはじめに、複数の取引所に登録します。アービトラージは異なる取引所で差額を利用して稼ぐ方法なので、少なくとも2つ以上の取引所に登録しましょう。多くの取引所に登録すればするほど、自分の取引スタイルに合った、より利益を得られる取引所を見つけることができるかもしれません。
また、取引手数料や送金手数料なども取引所によって異なるため、手数料がかかることによって利益が得られなくなることがないように、しっかりと吟味することが重要です。
複数の取引所に登録した後、実際に仮想通貨を購入します。これで、アービトラージを始めるための準備が整いました。
アービトラージのやり方
アービトラージのやり方は、以下の4つです。
- 安い取引所で買付し、高い取引所で売付する(単純売買)
- 両建てして空売りを利用する
- 価格差が収まるのを待つ
- いくつかの通貨の価格差を利用する
安い取引所で買付し、高い取引所で売付する(単純売買)
単純売買での取引は、以下の手順で行います。
- 2つの取引所を見比べる
- 価格の安い方で買付する
- 買った通貨を、価格の高い方に送る
- 価格の高い方で売る
登録してある取引所から、2つの取引所を選び、通貨の価格を見比べます。
通貨の価格の安い方で買付します。
買付した通貨を、もう一方の価格の高い方の取引所に送ります。
価格の高い取引所で売付します。これで取引が完了です。
メリットは、シンプルな方法なので取引しやすいことと、必要な資本が他の取引と比べて少なく抑えられる点です。
取引所に通貨を送る際などに手数料が発生しますが、それを除けば、資産にかかる資本以外はほとんどかかりません。
デメリットは、取引所間での取引には30分ほどかかるので、価格変動に対処しきれない点です。
特に仮想通貨は毎秒の価格変動が激しいので、狙い通りの取引をすることが難しく、大きなリスクを伴うと言えるでしょう。
空売りを利用する
空売りを利用して利益を得るやり方は、以下のとおりです。
- 2つの取引所を見比べる
- 価格の安い方で買付する
- 買付するのと同時に、価格の高い方で空売りする
- 価格の安い方で買付した通貨を、空売りした方に送る
- 送った通貨を売付し、空売りした通貨も決済する
登録してある取引所から、2つの取引所を選んで、価格を見比べます。
価格の安い方の取引所で通貨を買付します。
通貨を買付するのと同時に、価格の高い方の取引所で空売りします。
価格の安い方で買付した通貨を、空売りした方へ送ります。
送った通貨を売付した後、空売りした通貨も決済します。
最初に空売りしているため、その時点で資産の価格が固定され、取引を行っている時に価格が変動しても、影響を受けずに利益を上げることができます。
メリットは、空売りをすることであらかじめ価格が固定されるので、価格変動のリスクを抑えることができる点です。空売りによって、最低限の利益の見込みを持つことができます。
デメリットは、空売りする分の証拠金がなければできないので、取引に必要になる資金が増加する点です。予算が少ない場合には、行うことが難しいと言えます。
価格差が収まるのを待つ
価格差が収まるのを待つ方法の手順は、以下のとおりです。
- 「空売りを利用する」の1〜3と同じ
- 2つの取引所の価格差が解消されるまで待つ
- 価格差が解消された後、2つの取引所での取引を反対売買する
上記の「空売りをする」の1~3と同じなので、参考にしてください。
取引所間での価格差が解消されるまで、取引を行わずに待機します。
価格差が解消されたら、買付していた通貨を売付し、空売りしていた通貨を買付します。これで取引が完了です。
メリットは、取引所間で取引をする必要がないため、手数料がかからず、レバレッジを高めることができる点です。コストを低く抑えることができるので、投資にその分のお金を回せます。
デメリットは、差額の解消を待っている間に証拠金が不足してしまう恐れがあることと、ロスカットが発生してしまう可能性があることです。いつ差額が解消されるのか分からないので、含み損(保有している資産の価値が大幅に下落すること)が大きくなる可能性もあります。
レバレッジとは、証拠金をもとにして、余力以上の金額の取引を行うことです。
ロスカットとは、証拠金が含み損を抱えきれなくなる前に、強制的に決済が行われることです。
複数通貨の価格差を利用する
一つの取引所の中で、複数の通貨を交換し続けることで価値が付加されていき、利益を得る方法です。
メリットは、一つの取引所で行われるため、手数料がかからない点です。
デメリットは、異なる通貨間の価格差を見つけることが難しく、また頻繁には生じないため、価格差を検知する専用のアプリが必要になることです。