「転石苔を生ぜず」ということわざを知っていますか?
「転石苔を生ぜず」は、イギリスから伝わったことわざと言われていますが、実はイギリスとアメリカでは解釈が異なるのです。
- イギリス:仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと
- アメリカ:活発に動いている人は時代に取り残されないこと
このように意味が真逆になります。
この記事では、「転石苔を生ぜず」の意味だけでなく、由来や使い方についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
「転石苔を生ぜず」の意味
転石苔を生ぜず
読み:てんせきこけをしょうぜず
意味:仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと。転じて、活発に動いている人は時代に取り残されないこと。
先述した通り、「転石苔を生ぜず」の意味は「仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと」です。
転じて、「活発に動いている人は時代に取り残されない」という意味を表す場合もあります。
「転石苔を生ぜず」は国によって意味が異なることわざです。イギリスでは、転がっている石に苔が生えない様子をネガティブに捉え、「仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しない」という意味で使用されます。
一方アメリカでは、苔が生えないことをポジティブに捉え、「活発に動いている人は時代に取り残されない」という意味で使用されます。
「転石苔を生ぜず」の由来は「A rolling stone gathers no moss.」
「転石苔を生ぜず」の由来は、明治時代にイギリスのことわざ「A rolling stone gathers no moss.」が和訳されたものと言われています。
しかし、日本において「転石苔を生ぜず」が一般的に使用されるようになったのは、その後入ってきたアメリカ式の意味「活発に動いている人は時代に取り残されない」と言われています。
「転石苔を生ぜず」の英語表現
「転石苔を生ぜず」は、その由来である「A rolling stone gathers no moss.」という英語表現のほうが、日本においても有名です。
この英文は、
- a rolling stone:転がる石
- gather:集める
- no:~ない
- moss:苔
という単語によって構成された英文です。
「A rolling stone gathers no moss.」を直訳すると、「転がる石は苔を集めない」となり、そこから英文は「転石苔生ぜず」という、ことわざとして和訳されました。
「転石苔を生ぜず」のイギリスとアメリカでの意味の違い
「A rolling stone gathers no moss.」は、イギリスとアメリカで意味が異なります。
イギリスの場合
イギリス英語では、転石にあたる「A rolling stone」は風来坊(ふうらいぼう)を意味します。つまり、「A rolling stone」は、根を張らずに(根気がなく)落ち着かない人間というネガティブな意味として使われます。
そして、「A rolling stone gathers no moss.」で使用されている「moss」は成功や大成を比喩しています。このポジティブな単語「moss」に否定を表す「no」を付けることでネガティブな表現になります。
よってイギリス英語としての和訳は、「仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと」というネガティブな意味になります。
アメリカの場合
アメリカ英語では、落ち着いてずっと動かないことは「活発ではない」「時代に取り残されている」とネガティブに解釈されます。
そのため、イギリス英語ではネガティブな表現である「A rolling stone」がアメリカ英語ではポジティブな表現として使われます。一方で「moss」は「付いてほしくない」ネガティブなものとして表現されます。
よってアメリカ英語としての和訳は、「活発に動いている人は時代に取り残されないこと」というポジティブな意味になります。
「転石苔を生ぜず」の例文と使い方
「転石苔を生ぜず」のイギリス英語・アメリカ英語それぞれの意味に沿って、例文をご紹介します。
イギリス英語の意味「仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと」の例文
例文1.転石苔を生ぜずというだろう、転職ばかりしているとキャリアも積めず年収も上がらないよ。
例文2.また引っ越したの?転石苔を生ぜずというように、転居ばかりしているとお金は貯まらないよ。
例文3.キャリアアップではない、「嫌だから」という理由だけで転職を繰り返すのはおすすめしないわ。転石苔を生ぜずという言葉がある通り、ちょっとした理由で転職を繰り返していてはいつまでたっても悪条件でしか働けないわよ。
「転石苔を生ぜず」をイギリス英語の意味として使う場合は、転職や転居といったライフスタイルにおいて大きな変化を何回も繰り返すことをネガティブに表現するときに使用します。
転職や転居自体を否定的に捉えているのではなく、転職や転居といった大きなイベントを安易に行うことを咎めるために活用するのがポイントです。
アメリカ英語の意味「転じて活発に動いている人は時代に取り残されないこと」の例文
例文1.なにをうじうじしているんだい?転石苔を生ぜずというように、常に活発に動かないと同期に後れを取ってしまうよ。
例文2.キャリアアップしたいのになぜ行動を起こさないの?転石苔を生ぜず、口で不満を言うだけで行動に移さなければ周りに置いて行かれてしまうよ。
例文3.転石苔を生ぜずと言葉があるように、常に動いて情報をキャッチアップしていればしっかりとしたキャリア形成ができるだろう。
「転石苔を生ぜず」をアメリカ英語の意味として使う場合は、なかなか行動に移そうしない、変化しようとしないことをネガティブに表現したいときに使用します。
イギリス英語の意味では変化をしすぎることをネガティブに捉えているのに対し、アメリカ英語は変化しないことをネガティブに捉えているのがポイントです。
「転石苔を生ぜず」の対義語と類語
「転石苔を生ぜず」の対義語・類語を紹介します。「転石石を生ぜず」は2つの真逆の意味を持つので、それぞれの対義語と類語が同義になります。
ここではイギリス英語の意味「仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと」とアメリカ英語の意味「転じて活発に動いている人は時代に取り残されないこと」、それぞれの意味における対義語・類語を紹介していきます。
イギリス英語の意味における対義語・アメリカ英語の意味における類語
イギリス式の意味での対義語・アメリカ式の意味での類語を4つご紹介します。
1.流れる水は腐らぬ(ながれるみずはくさらぬ)
「流れる水は腐らぬ」の意味は「常に努力をして、動き続けている人は、絶えず何かしら進歩していくこと」です。
溜まっている(停滞している)水はよどみ腐ってしまいますが、流れている水は新鮮で腐らないことの例えです。
例文1.流れる水は腐らぬというでしょ?だらだらしていないで、なにか行動を起こしたら?
例文2.慎重であることも大切だけど、流れぬ水は腐らぬ、動いていることでさらに自分自身が成長することもできると思うよ。
例文3.流れぬ水は腐らぬ、伝統を重んじるばかりではなく、新しい考えも取り入れていかないと停滞してしまうだろう。
2.人通りに草生えぬ(ひとどおりにくさはえぬ)
「人通りに草生えぬ」の意味は「日ごろ使っている道具は錆びない(さびない)ことのたとえ」です。また「すでにほかの人が手掛けている商売や物事で儲けを出すのは難しいこと」を指すときにも使用されます。
「人通りに草生えぬ」は、人通りが多い場所には雑草が生えない様子からできたことわざです。
例文1.このお鍋もう10年以上使っているけど、まだ現役で使えそう!人通りに草生えぬというし、これからも大切に使おう。
例文2.人通りに草生えぬというように、すでに競合他社がひしめき合っているこの領域に新規事業として参入するのは難しいだろう。
例文3.人通りに草生えぬ、レッドオーシャンに挑もうとしているベンチャーよりもブルーオーシャンに挑戦するベンチャーを選ぶべきだ。
3.繁昌の地に草生えず(はんじょうのちにくさはえず)
「繁昌の地に草生えず」の意味は「よく働く人は活き活きとしていること、もしくはいつも使っている道具は錆びないこと」です。
繁盛している場所は、人通りが多くて雑草が生えない様子からできたことわざです。
例文1.繁昌の地に草生えず、うちのおじいちゃんは90歳になった今でも現役で仕事をしているから元気なんだなぁ。
例文2.この包丁、母から譲り受けてもう30年になるけど、毎日欠かさず使って手入れしているまだまだ使えそう。まさに繁盛の地に草生えず、これからも大切に使わなくちゃ。
例文3.うちの母はもう還暦だが、持病もなくいつも元気。繁盛の地草生えず、いつも楽しそうに仕事をしているからかもしれないね。
4.流水腐らず、戸枢螻せず(りゅうすいくさらず、こすうろうせず)
「流水腐らず、戸枢螻せず」の意味は「常に行動しているものは、停滞や腐敗がないこと」です。
「流水腐らず、戸枢螻せず」は流れている水は腐らず、常に開閉され使用されている戸に虫がつかない様子からできたことわざです。
戸枢は開き戸を開閉する際の軸となる部分のことで、螻はけら、このことわざの場合は虫を指しているとされています。
例文1.流水腐らず、戸枢螻せず、常に行動していれば、時代に後れを取らずに進歩し続けていけるはずだ。
例文2.あの人はいくつにもなっても活き活きとしていている。流水腐らず、戸枢螻せずというように、いつも活発に行動しているからなんだろうなぁ。
例文3.彼女は見る度に魅力が増している気がする。好奇心が旺盛でいろんなところに飛び回って常に行動しているからかなぁ。まさに流水腐らず、戸枢螻せず、私も見習わなくちゃ!
アメリカ英語の意味における対義語・イギリス英語の意味における類語
アメリカ式の意味での対義語・イギリス式の意味での類語を4つご紹介します。
1.石の上にも三年(いしのうえにもさんねん)
「石の上にも三年」の意味は「つらいことがあっても我慢強く辛抱すれば成功すること」です。
「石の上にも三年」はポジティブな表現で使用されます。「どんなにつらくてもある程度の長さは続けなくてはならない」という意味で誤用されることがありますので、注意しましょう。
例文1.何事もやり始めはなかなかできずに辛いものだ。だが石の上にも三年、我慢強くコツコツ努力すれば必ず自分の力になると思うよ。
例文2.なかなか結果が出ずに辛いときもあったけど、石の上にも三年、学生生活の最後に全国大会優勝という有終の美をかざれてよかったです。
例文3.石の上にも三年、厳しいときもあったが、辛抱強く毎日コツコツと努力してきた成果がようやく見えてきた。
2.茨の中にも三年(いばらのなかにもさんねん)
「茨の中にも三年」の意味は「どんなに辛くても我慢して続けていれば必ず報われるということ」です。石の上にも三年の同義語です。
例文1.毎日の稽古はきつく辛かったが、茨の中にも三年と耐え抜き、やり続けてきたおかげで全国制覇することができた。
例文2.慣れない仕事でとてもつらい時期もあったが、茨の中にも三年と辛抱強く取り組み続け、この前大きな案件を獲得することができた。
例文3.また同じことで弱音を吐いているのかい?茨の中にも三年、辛くても耐えてやり抜くことも重要だ。
3.継続は力なり(けいぞくはちからなり)
「継続は力なり」の意味は「どんなことでも続けていくことで成果が得られること」です。
その由来は大正時代の宗教典とされており、現在では座右の銘や格言としてよく知られています。
例文1.継続は力なり、一度始めたからには結果を出すまで毎日努力し続けなくては。
例文2.継続は力なり、日々の積み重ねが大きな成果を生むのである。
例文3.最初に結果を出せたからといって、調子乗ってはいけない。継続は力なり、今回の結果を糧にやり続ければさらに大きな成果を出せるはずだよ。
4.辛抱する木に金がなる(しんぼうするきにかねがなる)
「辛抱する木に金がなる」の意味は「辛抱強く努力していれば、やがて成功して財産もできること」です。
「木」は「気」にかけて表現されたものといわれています。
例文1.辛抱する木に金がなるというように、今がつらくても辛抱強く努力し続ければ必ず結果がついてくるよ。
例文2.この前見た有名な起業家のインタビュー記事によると、辛くてもやり抜いたことが今の成功につながっているそうだ。まさに辛抱する木に金がなる、根気と努力が重要なんだなぁ。
例文3.私には特別な才能はありません。辛抱する木に金がなるという言葉があるように、ただ成功するまで辛抱し努力をしてきただけです。
まとめ
「転石苔を生ぜず」はイギリス・アメリカ英語の和訳を由来とし、文脈次第でまったく異なる意味を表すことわざです。
「転石苔を生ぜず」はビジネスシーンだけでなく、日常生活にも活用できます。ぜひ、覚えておきましょう!
①「転石苔を生ぜず」の意味
・仕事や住まいを変えてばかりいる人は大成しないこと。転じて活発に動いている人は時代に取り残されないこと
②「転石苔を生ぜず」の由来
・イギリスのことわざ「A rolling stone gathers no moss.」
③「転石苔を生ぜず」の英語表現
・A rolling stone gathers no moss.
④「転石苔を生ぜず」の使い方と例文
・転石苔を生ぜずというだろう、転職ばかりしているとキャリアも積めず年収も上がらないよ。
・また引っ越したの?転石苔を生ぜずというように、転居ばかりしているとお金は貯まらないよ。
・なにをうじうじしているんだい?転石苔を生ぜずというだろう?常に活発に動かないと同期に後れを取ってしまうよ。
・キャリアアップしたいのになぜ行動を起こさないの?転石苔を生ぜず、口で不満を言うだけで行動に移さなければ周りに置いて行かれてしまうよ。など
⑤「転石苔を生ぜず」の対義語と類語
・流れる水は腐らぬ
・人通りに草生えぬ
・繁昌の地に草生えず
・流水腐らず、戸枢螻せず
・石の上にも三年
・茨の中にも三年
・継続は力なり
・辛抱する木に金がなる