『犬も朋輩鷹も朋輩』の意味【例文・由来・類語も解説】

犬も朋輩鷹も朋輩の意味と使い方

「犬も朋輩鷹も朋輩(いぬもほうばいたかもほうばい)」ということわざを知っていますか?

「犬も朋輩鷹も朋輩」の意味は、「鷹狩りにおける犬と鷹のように、役割や地位など待遇が異なっていても同じ主人に仕えていれば同僚であることに変わりはないこと」です。

分解して考えると、

  • 犬も朋輩
  • 鷹も朋輩

となります。

「朋輩(ほうばい)」とは、「同じ主人に仕える仲間、同僚」という意味です。

この記事では、「犬も朋輩鷹も朋輩」の意味はもちろん、「例文」や「由来」「類語」「対義語」も詳しく解説していきます。

目次

「犬も朋輩鷹も朋輩」の意味

犬も朋輩鷹も朋輩
読み:いぬもほうばいたかもほうばい

意味:鷹狩りにおける犬と鷹のように、役割や地位など待遇が異なっていても同じ主人に仕えていれば同僚であることに変わりはないこと

「犬も朋輩鷹も朋輩」の意味は、「鷹狩りにおける犬と鷹のように、役割や地位など待遇が異なっていても同じ主人に仕えていれば同僚であることに変わりはないこと」です。

ことわざの中で使用されている「朋輩(ほうばい)」とは、同じ主人に仕える仲間、同僚という意味です。

鷹狩りとは

鷹狩

鷹狩りとは、飼いならした鷹を使って、野生の鳥や小さな獣などを狩る狩猟方法のことです。

日本においては、4世紀ごろ仁徳天皇(にんとくてんのう)の時代に大陸から鷹が輸入され、朝廷の公家(くげ:朝廷に仕える貴族・上級官人の総称)の遊びとして広まりました。

そして公家の遊びだった鷹狩りは、鎌倉時代に武家の間でも流行しました。その後江戸時代に幕府の管轄下におかれたものの、武家を中心に親しまれました。

鷹狩りには、鷹に加え犬(猟犬)も連れていきます。犬は、鷹が上空で獲物を狩りやすいように、地上から獲物を追い立てます。

猟犬

こういった狩猟方法から鷹狩りでは、実際に狩りをする鷹が中心的で上位に立っていて、そのサポートをする犬は補佐的で下位にいるように考えられます。

「犬も朋輩鷹も朋輩」は、こうした鷹狩りでの鷹と犬のように役割(立場)が異なっていても、同じ主人に仕えているのであれば同僚であることには変わりないことを表したことわざです。

「犬も朋輩鷹も朋輩」の由来は『賀古教信七墓廻』

賀古教信七墓廻

出典:東京大学学術資産等アーカイブズポータル

「犬も朋輩鷹も朋輩」の由来は、江戸前期・元禄時代に活躍した、近松門左衛門の浄瑠璃の演目『賀古教信七墓廻(かこのきょうしんななはかめぐり)』と言われています。

『賀古教信七墓廻』は、とある僧侶が主人公の浄瑠璃作品(じょうるりさくひん:劇場音楽作品)です。

その演目の一つに、武家の家老(かろう:武家の家臣団のうち最高の地位にあった役職)と草履取りのやり取りが描かれるシーンがあります。このシーンが「犬も朋輩鷹も朋輩」の由来のシーンとなっています。

『賀古教信七墓廻』における「犬も朋輩鷹も朋輩」の登場シーン

『賀古教信七墓廻』が描かれた江戸前期の社会には、現代社会にはない、士農工商(しのうこうしょう:武家・農民・職人・商人と順位づけた社会階級)という明確な身分制度が敷かれていました。

そして、士農工商の中で最上位の階級とされる武家の間にも身分や地位があり、さらにその家来同士にも明確な役職・身分の違いがありました。

『賀古教信七墓廻』に登場する、家老と草履取りは同じ武家に仕える家来ですが、その役割、身分(地位)が異なります。当時の常識で考えると、身分に大きな違いがある家老と草履取りが酒を酌み交わすことはありません。

ところがこの演目では、身分の高い家老が身分の低い草履取りに対して酒を勧めるシーンがあります。酒を勧められた草履取りは「とんでもございません」と断ります。その言葉を受けた、家老は「何を言う。犬も朋輩、鷹も朋輩じゃ。同じ殿のために働いている仲じゃないか」と返します。

このセリフが「犬も朋輩鷹も朋輩」の由来とされています。

「犬も朋輩鷹も朋輩」の使い方と例文

社会人の常識用語

「犬も朋輩鷹も朋輩」は、上下関係なく、平等な関係であることを伝えたいときに活用します。

注意したいのが、「犬も朋輩鷹も朋輩」は上の立場の人が下の立場の人に対して使用することわざであるという点です。

目上の人に対して「犬も朋輩鷹も朋輩といいますし」などと使うことは失礼にあたりますので使い方には十分に注意しましょう。

例文1.これはわが社の命運をかけた一大プロジェクトだ。犬も朋輩鷹も朋輩というように年次・役職関係なく、自分の強みを存分に活かして存分に取り組んでくれ。

例文2.犬も朋輩鷹も朋輩、チーム全員一丸となってこの大きな案件を乗り越えよう。

例文3.そんなに緊張しなくていいさ。犬も朋輩鷹も朋輩というように、役職関係なく一社員同士として一杯やろうじゃないか。

例文4.部長はいつも「犬も朋輩鷹も朋輩、年次・役職関係なく、フラットになんでも意見を言い合ってくれ」といって、部署全員をフラットに扱ってくれる。

例文5.以前はトップダウンで現場の人間が役職者に対して意見を言うなんてありえなかった。しかし今は、役職関係なく本当にいろいろな立場の人が議論を交わしている。まさに犬も朋輩鷹も朋輩、社員全員が一丸となって会社を成長させていると実感している。

「犬も朋輩鷹も朋輩」の類語

辞書

「犬も朋輩鷹も朋輩」の類語は多くありません。ここでは、「犬も朋輩鷹も朋輩」の類語である「同じ釜の飯を食う」を紹介します。

「同じ釜の飯を食う」の意味は、「同じ職場で働いたことのある同僚(もしくは寝食をともにした仲間)のこと」です。

「同じ釜の飯を食う」の意味における「同僚」は、同じ立場・役職の同僚を指しています。「同じ釜の飯を食う」は「犬も朋輩鷹も朋輩」の類語とされていますが、その使い方やニュアンスは異なります。

「同じ釜の飯を食う」の例文・使い方

例文1.私が所属している女子バレーボール部は、チームワークがとてもいい。同じ釜の飯を食った仲間として、どんなに厳しい練習や合宿も乗り越えてお互いを信頼し合っているからだと思う。

例文2.あいつ元気かなぁ。学生時代からずっと一緒で同じ釜の飯を食ってきたから、なんだか自分のことみたいに気になるんだよなぁ。

例文3.同じ釜の飯を食った仲だ、あいつの考えていることはだいたい想像できるさ。

例文4.僕らは同じ釜の飯を食った仲だろ、何かあったらいつでも連絡してくれ。

例文5.彼とは前の会社で一緒だったんだ。なかなかブラックな会社だったが、その分同じ釜の飯を食った仲間として社員同士の関係は強かった。いろんなことを話せるような仲間ができたという点においてはあの会社に感謝してるよ。

「同じ釜の飯を食う」は、チームや部署など組織の絆の強さや結束力を表現したいときに活用します。

部活仲間や同期など同じ立場や役職に属する人に対して使用します。「同じ釜の飯を食う」はよく「同じ釜で飯を食う」と誤用されますので、注意しましょう。

まとめ

「犬も朋輩鷹も朋輩」は日常生活やビジネスシーンにおいて、あまり目にすることがないことわざです。

なかなか活用する機会のないことわざですが、ビジネスパーソンとしての教養力アップもかねて、意味や由来、使い方までおさえておきましょう。

①「犬も朋輩鷹も朋輩」の意味

・鷹狩りにおける犬と鷹のように、役割や地位など待遇が異なっていても同じ主人に仕えていれば同僚であることに変わりはないこと

②「犬も朋輩鷹も朋輩」の由来

・江戸時代に活躍した、近松門左衛門の浄瑠璃『賀古教信七墓廻』から

③「犬も朋輩鷹も朋輩」の使い方と例文

・これはわが社の命運をかけた一大プロジェクトだ。犬も朋輩鷹も朋輩というように年次・役職関係なく、自分の強みを存分に活かして存分に取り組んでくれ。

・犬も朋輩鷹も朋輩、チーム全員一丸となってこの大きな案件を乗り越えよう。

・先んずれば人を制す、勝負ごとは何事も先手を打つことが功を奏すことが多いと感じる。 など

④「犬も朋輩鷹も朋輩」の類語

・同じ釜の飯を食う

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