「立つ鳥跡を濁さず」ということわざを聞いたことがあるでしょうか?
聞いたことはあるけど、意味がわからないという方が多いと思います。結論から言うと、「立つ鳥跡を濁さず」の意味は、「立ち去るときは後始末をしっかりするべき」「引き際は潔く」です。
「過ごした場所はきれいな状態にしてから去る」という意味では、転職や転勤、恋愛において重要なことわざとなります。
この記事では、「立つ鳥跡を濁さず」の意味だけでなく、語源や使い方についても解説しています。参考になる情報がきっと見つかるはずです。
「立つ鳥跡を濁さず」の意味
立つ鳥跡を濁さず
読み:たつとりあとをにごさず
意味:①立ち去るときは後始末をしっかりするべき ②引き際は潔く
「立つ鳥跡を濁さず」には、
- 立ち去るときは後始末をしっかりするべき
- 引き際は潔く
という2つの意味があります。簡単に言うと、「過ごした場所はきれいな状態にしてから去る」という意味ですね。人生において非常に重要なことわざです。
「立つ鳥跡を濁さず」を分解して考えると、意味がスッと理解できると思います。
- 立つ:飛び上がって去る
- 鳥:水鳥
このように、「水鳥(みずとり)が飛び立ったあとの水辺は、濁ることなく清く澄んだままであること」から、上記の意味となっています。
「立つ鳥跡を濁さず」の語源・由来
先述したように、「立つ鳥跡を濁さず」の語源・由来は、「水鳥(みずとり)が飛び立ったあとの水辺は、濁ることなく清く澄んだままであること」です。
「立つ鳥跡を濁さず」は水鳥の習性を表している
水鳥は水辺に生息する鳥の総称のことです。川や池に飛来し、その場所に一定期間とどまり、次の場所へ羽ばたいていく習性があります。
水鳥が飛び立つと、その場所はエサや草花で散乱することなく、非常にきれいな状態を維持しているそうです。(よく街で見かける鳥はフンなどでその場所を汚すことがありますが、水鳥は違います)
水鳥が飛び立った後にきれいな状態を維持することから、「立つ鳥跡を濁さず」=「立ち去るときは後始末をしっかりするべき」という意味になったと言われています。
「立つ鳥跡を濁さず」の例文と使い方
「立つ鳥跡を濁さず」ということわざが重要な場面は多いです。ここでは、4つの場面に分けて「立つ鳥跡を濁さず」の使い方を紹介します。
場面①:仕事
仕事においては、「立つ鳥跡を濁さず」がとても重要です。特に、「転職」「転勤」「退職」をする際には、しっかりと現場に引き継ぎを行い、自分がいなくなっても業務が滞りなく進むようにする必要があります。
「◯◯さんは転職したけど、現場にろくに引き継ぎもしなかったせいで、トラブルが起こった」と言われないように、「立つ鳥跡を濁さず」を実践しましょう。
例文1.立つ鳥跡を濁さずというように、しっかりと現場に引き継いでから転職した。
例文2.立つ鳥跡を濁さずということわざの通り、部下にすべてを叩き込んでから退職した。
例文3.上司はすべての責任を果たしてからリタイアした。立つ鳥跡を濁さずとはこのことだ。
場面②:恋愛
恋愛においても「立つ鳥跡を濁さず」は重要です。恋愛の場面では、「後腐れなく」という表現が使われることが多いですが、「立つ鳥跡を濁さず」も使うことがあります。
お別れは悲しいですが、別れ際にトラブルになり引きずることは、もっと悲しいことです。「立つ鳥跡を濁さず」を意識して、相手に感謝と尊敬を持ってお別れしたいものです。
例文1.直接会って別れたい理由を話したら、彼女は納得してくれた。立つ鳥跡を濁さずとはこのことだ。
例文2.立つ鳥跡を濁さずというように、彼氏と別れる際にはトラブルなく穏やかに別れたいものだ。
例文3.立つ鳥跡を濁さずは、恋愛においては非常に重要だけど、それが難しい場合もある。
場面③:旅行
旅行先のホテルや観光地では、「立つ鳥跡を濁さず」が重要です。お世話になった分、使ったものは片付け、きれいな状態で帰路につきたいものです。
例文1.チェックアウトの日は、立つ鳥跡を濁さずというようにきれいに去りたいものだ。
例文2.観光地ではゴミを捨てずに、立つ鳥跡を濁さずという気持ちが非常に重要だ。
例文3.立つ鳥跡を濁さずということわざにある通り、お世話になった場所はきれいな状態に戻すのが常識だ。
「立つ鳥跡を濁さず」の類語
「立つ鳥跡を濁さず」の意味は、「立ち去るときは後始末をしっかりするべき」でした。物事をきれいにもとの状態に戻すという意味では、下記の類語が挙げられます。
類語①:後腐れがない
後腐れがない
読み:あとくされがない
意味:物事が終わった後に面倒なこと、煩雑なことが残らないこと
「後腐れがない」は、人間関係で用いられることが多い用語です。「きれいに元の状態に戻す」という点で、「立つ鳥跡を濁さず」と似ています。
例文1.後腐れなく元の旦那と別れることができた。
例文2.恋愛においては別れ際が本当に大事よ。後腐れがなく別れることができれば、次の恋愛に進めるよ。
例文3.友人のトラブルに巻き込まれたが、後腐れがなく解決できたのは不幸中の幸いだった。
類語②:飛ぶ鳥跡を濁さず
飛ぶ鳥跡を濁さず
読み:とぶとりあとをにごさず
意味:立ち去る者は、自分のいた場所を汚れたままにせず、きれいにしてから行くものだといういましめ
「飛ぶ鳥跡を濁さず」は、「立つ鳥跡を濁さず」と同じ意味です。先述したように、「立つ」は「飛ぶ」という意味なので、「立つ鳥跡を濁さず」を「飛ぶ鳥跡を濁さず」と書いても間違いではありません。
本来は、「立つ鳥跡を濁さず」と言いますが、「飛ぶ鳥跡を濁さず」をいう方もいます。
例文1.旅行先では、飛ぶ鳥跡を濁さずという気持ちが重要だ。
例文2.お世話になった会社なので、飛ぶ鳥跡を濁さずという気持ちで最後まで頑張ろう。
例文3.彼女とはしっかりと直接会って話し、飛ぶ鳥跡を濁さずという気持ちで向き合おう。
類語③:原状回復
原状回復
読み:げんじょうかいふく
意味:以前の状態に戻しておくこと
原状回復は、不動産業界で用いられることが多い用語です。店舗やオフィス、賃貸を借りたときの元の状態に戻すことを指します。
例文1.賃貸には原状回復義務があるので、もとの状態に戻すためにお金が必要だ。
例文2.イベントで使った会場を現状回復するためには、スタッフがもっと必要だ。
例文3.引っ越す時には原状回復する必要があるが、敷金を先に払っていたので、お金はかからなかった。
類語④:鷺は立ちての跡を濁さず
鷺は立ちての跡を濁さず
読み:さぎはたちてのあとをにごさず
意味:立ち去る者は、自分のいた場所を汚れたままにせず、きれいにしてから行くものだといういましめ
「立つ鳥跡を濁さず」「飛ぶ鳥跡を濁さず」と同じ意味です。「鳥」がより具体的に「鷺(さぎ)」になった言い方です。
「鷺」も飛び立つ時に、水面を汚さずに羽ばたいていく習性があります。「立つ鳥跡を濁さずの別の言い方もあるんだな」と知っておくだけで良いと思います。
例文1.鷺は立ちての跡を濁さずというように、しっかりと掃除をしてから帰ろう。
例文2.お世話になった会社なので、鷺は立ちての跡を濁さずというように、最後まで責任を持って最終日を迎えよう。
例文3.合宿最終日は、鷺は立ちての跡を濁さずというようにしっかりと掃除をしてゴミを捨ててから帰路につこう。
類語⑤:鳥は立てども跡を濁さず
鳥は立てども跡を濁さず
読み:とりはたてどもあとをにごさず
t意味:立ち去る者は、自分のいた場所を汚れたままにせず、きれいにしてから行くものだといういましめ
こちらも「立つ鳥跡を濁さず」と意味は同じ、別の言い方です。あまり使われることはないので、覚える必要はないと思います。
例文1.鳥は立てども跡を濁さずは、立つ鳥跡を濁さずの言い換え表現だ。
例文2.鳥は立てども跡を濁さずというように、別れ際はきれいに済ませるのが人生の鉄則だ。
例文3.鳥は立てども跡を濁さずは恋愛においては本当に重要だ。
「立つ鳥跡を濁さず」の対義語
対義語①:後足で砂をかける
後足で砂をかける
読み:あとあしですなをかける
意味:お世話になった人を裏切ったり、去り際に迷惑をかけること
「後足で砂をかける」の意味は、「お世話になった人を裏切ったり、去り際に迷惑をかけること」です。良い言葉ではないので、使うことは少ないと思います。
「後足」の読み方は、「うしろあし」ではなく「あとあし」が正しいので、注意しましょう。
例文1.お世話になった人に後足で砂をかけることだけはしてはいけない。
例文2.長い人生の中で、後足で砂をかけることは一度でもしてはいけない。
例文3.熱心に教育した部下にこんなことをされるなんて。後足で砂をかけられた気分だよ…。
対義語②:旅の恥は掻き捨て
旅の恥は掻き捨て
読み:たびのはじはかきすて
意味:旅先には知人はいないし、 長くとどまる訳でもないので、普段ならしないような恥ずかしい言動もその場限りでやってしまうこと
「旅の恥は掻き捨て」の意味は、「旅先には知人はいないし、 長くとどまる訳でもないので、普段ならしないような恥ずかしい言動もその場限りでやってしまうこと」です。
「旅の恥は掻き捨て」は、ネガティブな意味を持っていますが、ポジティブな表現として使うこともあります。例文を見てみましょう。
例文1.旅の恥は掻き捨てと思い、少し派手な服装で町中を歩き回った。
例文2.出不精な僕だけど、旅の恥は掻き捨てと言わんばかりに遊びに出たかけた。
例文3.旅の恥は掻き捨てと言うけれど、調子に乗りすぎはよくはないよ。立つ鳥跡を濁さずという言葉を忘れないようにね。
対義語③:旅の恥は弁慶状
旅の恥は弁慶状
読み:たびのはじはべんけいじょう
意味:旅先には知人はいないし、 長くとどまる訳でもないので、普段ならしないような恥ずかしい言動もその場限りでやってしまうこと
「旅の恥は弁慶状」は、「旅の恥は掻き捨て」と同じ意味です。「掻き捨て」を「書き捨て」と書いて「弁慶状(書き捨てた手紙)」にかけた洒落な言い方です。
例文1.旅の恥は弁慶状の本来の言い方は、旅の恥は掻き捨てです。
例文2.旅の恥は弁慶状と言うけれど、ハメを外しすぎるのは大人として良くないですよ。
例文3.旅の恥は弁慶状という気持ちで、いつもならしないようなことに積極的にチャレンジした。
対義語④:後は野となれ山となれ
後は野となれ山となれ
読み:あとはのとなれやまとなれ
意味:目先のことだけ解決できれば、あとはどうなっても構わないこと
「後は野となれ山となれ」の意味は、「目先のことだけ済めば、あとはどうなっても構わないこと」です。「後は野となれ山となれ」の「後」を、「先」や「末」に言い換えて使う場合もあります。
「目の前のことはしっかりやったので、あとのことは知ったことか」という開き直りの意味が強いことわざです。
そのため、良い意味で使われることがほとんどありません。「やれることはやったので、あとは結果を待つだけ」というポジティブな意味では、「人事を尽くして天命を待つ」を使った方が良いでしょう。
例文1.テストの最後の問題を解く時間がなかったので適当に埋めた。後は野となれ山となれとはこのことだ。
例文2.もう俺にはやれることはない。後は野となれ山となれ状態だよ。
例文3.自分ができることがないからといって、後は野となれ山となれ状態は駄目だよ。
「立つ鳥跡を濁さず」の英語と中国語の表現
英語
「立つ鳥跡を濁さず」の英語表現は、主に3つあります。
①A bird does not foul the nest that it is about to leave.
立つ鳥跡を濁さず。
- foul:汚す
- nest:巣
直訳すると、「飛ぼうとする鳥は巣を汚さない」となり、「立つ鳥跡を濁さず」を表現することができます。
②A bird taking flight does not foul the water
立つ鳥跡を濁さず。
「taking flight」が「A bird」を修飾して「飛ぶ鳥」となり、直訳すると「飛ぶ鳥は水を汚さない」となります。
③It is a dirty bird that fouls its own nest.
立つ鳥跡を濁さず。
こちらは「It is…that〜」の構文ですね。「that以下は….です」という意味になります。つまり、直訳すると「自分の巣を汚すのは汚い鳥です」となり、「立つ鳥跡を濁さず」を表現することができます。
中国語
中国語では、下記のような表現があります。
好来不如好去(hǎo lái bù rú hǎo qù)
立つ鳥跡を濁さず
まとめ
今回は、「立つ鳥跡を濁さず」ということわざを紹介しました。仕事や恋愛、旅行先など、人生において重要な場面で使えるので、ぜひ覚えておきましょう。
①「立つ鳥跡を濁さず」の意味
・立ち去るときは後始末をしっかりするべき
・引き際は潔く
②「立つ鳥跡を濁さず」の語源・由来
水鳥(みずとり)が飛び立ったあとの水辺は、濁ることなく清く澄んだままであることから
③「立つ鳥跡を濁さず」の例文と使い方
・立つ鳥跡を濁さずというように、しっかりと現場に引き継いでから転職した。
・直接会って別れたい理由を話したら、彼女は納得してくれた。立つ鳥跡を濁さずとはこのことだ。
・チェックアウトの日は、立つ鳥跡を濁さずというようにきれいに去りたいものだ。
④「立つ鳥跡を濁さず」の類語
・後腐れがない
・飛ぶ鳥跡を濁さず
・原状回復
・鷺は立ちての跡を濁さず
・鳥は立てども跡を濁さず
⑤「立つ鳥跡を濁さず」の対義語
・後足で砂をかける
・旅の恥は掻き捨て
・旅の恥は弁慶状
・後は野となれ山となれ
⑥「立つ鳥跡を濁さず」の英語と中国語の表現
・A bird does not foul the nest that it is about to leave.
・A bird taking flight does not foul the water
・It is a dirty bird that fouls its own nest.
・好来不如好去(hǎo lái bù rú hǎo qù)