金融取引を行う際、様々なリスクが伴いますが、そのなかでも突発的に発生し、相場の変動に大きな影響を受けるのが「カントリーリスク」です。
カントリーリスクとは、世界各地で起きる政治・経済・社会情勢、自然災害などに影響されるリスクのことです。この記事では、カントリーリスクがどのような時に起きるのか、発生した時の対処方法について解説します。
カントリーリスクとは
カントリーリスクとは、「投資する国・地域の政治、経済、社会情勢などの変化に起因するリスクのこと」です。
カントリーリスクは、すべての国に存在し、予測できない事態が発生するので、非常に注意が必要です。特に、政治や社会情勢、経済基盤の不安定な新興国のカントリーリスクは先進国に比べて高いとされています。
発展途上国への投資は、高い経済成長や高い金利が期待できますが、リスクが高いことを考慮して取引する必要があります。
カントリーリスクには、様々な要因があり、事前の予測が難しいものが多いです。すべてのリスクを把握し対応することは困難となりますが、国際情勢に目を向けて取引を行うことで大きな損失を避けられる可能性があります。
カントリーリスクの要因
カントリーリスクの要因は主に4つあります。
①政治情勢によるリスク
政治情勢によるリスクとは、革命運動、政権交代や政策の変更による制度・規制や政策の変更など、政治的な要因から来るリスクです。
過去に発生した政治リスクは、2014年のタイの軍事クーデターや2018年の北アイルランドの国境問題が思い出されます。
2022年に、ロシアがウクライナへ軍事侵攻を進めたことで、欧米諸国がロシアに対して経済制裁を強めていることも、政治リスクの1つです。
②経済情勢によるリスク
経済情勢によるリスクとは、急激なインフレ状態、通貨の下落、国債の債務不履行など、経済的な要因から来るリスクのことです。
過去に発生した事例は、1997年のアジア通貨危機、2009年のジンバブエのハイパーインフレーションです。
③社会情勢によるリスク
社会情勢リスクとは、宗教や文化、歴史的な事情によってテロや紛争、不買運動が起こるリスクです。
過去に発生した事例は、2016年のベルギー連続テロ事件、中国の反日活動による不買運動です。
④自然災害によるリスク
自然災害によるリスクとは、地震や台風、洪水といった自然災害からくるリスクです。特に、日本では自然災害が多く、自然リスクが高いと言えます。
過去に発生した事例は、2011年のタイ大洪水、2018年のノートルダム大聖堂火災です。
カントリーリスクの調査方法
カントリーリスクを事前に知るためには、格付会社や調査会社のカントリーリスクの集計・分析結果の情報を活用する必要があります。
評価内容は、具体的な数値や危険度をまとめており、各会社独自の指標で確認することができます。主な格付け会社、調査会社は、以下のとおりです。
①日本貿易保険(NEXI)
日本貿易保険とは、OECD(経済協力開発機構)カントリーリスク専門家会合において議論を行い、それぞれの国や地域の評価を決定しています。
国ごとの債務の支払い状況、経済・金融情勢などの情報に基づいて判断されており、評価基準は「A」から「H」までの8段階で、最上位は「A」最下位は「H」となっています。
②格付投資情報センター(R&I)
格付投資情報センターとは、日本の民間格付け会社です。
国内の主要な銀行・商社・事業会社・研究機関を対象に、100カ国の国や地域の政治・社会・経済・国際関係など12項目の予測アンケートを、年に2回実施し評価します。
評価基準は「AAA」から「D」まであり、「AAA」が最高位で、「AA」「A」と続きます。「BBB」までが、リスクが低く信用度が高い「投資適格」とされます。
③スタンダード&プアーズ(S&P)
スタンダード&プアーズ(S&P)とは、アメリカの格付け会社です。政府が発行する国債や企業の社債の利払いなどの財務調査を通じて評価しています。
評価基準は、最上位を「AAA」で、「AA」「A」と続き、最下位を「D」としています。細かくランク付けされており、数値とカントリーリスクの危険度も公表されています。
カントリーリスクの対策方法
①事前に把握する
カントリーリスクを回避するための方法は、事前に把握することが最も重要です。
「格付け投資センター(R&I)」や「スタンダード&プアーズ(S&P)」が発表しているカントリーリスクの格付け指標を確認すると良いです。
②リスクを分散する
カントリーリスクにおけるリスク分散方法は、海外拠点の分散や移転です。特定の国にのみ集中して取引を行うと、その国が経済危機などに陥ったとき大きな影響を受ける可能性があります。
そのため、拠点を複数設けることで、リスクを分散し、カントリーリスクが起きても、対処できるようになります。