前提:為替とは
為替とは、現金の代わりに、手形・小切手・証書などで決済をすませる方法です。
一般に、為替と言った場合には「内国為替」と「外国為替」の2つを指します。
内国為替とは
内国(ないこく)為替とは、「国内にいる債権者や債務者に銀行間の口座振替を使って取立てや送金を行う、資金決済の仕組みのこと」をいいます。
外国為替とは
外国為替とは、「内国為替に対して通貨を異にする国際間の貸借関係を、現金を直接輸送することなく、為替手形や送金小切手などの信用手段によって決済する方法」です。
為替の始まり
日本において為替の始まりは、江戸時代に大阪を中心に為替の取引が発達し、当時の世界ではもっとも優れた送金システムを築き上げました。
江戸の商人が大坂の商人に代金を支払う場合、現金を直接届けるのでは道中に盗難などの危険が伴います。
そこで、江戸の商人は事前に両替商に代金を渡して為替手形(支払いを依頼した証書)を発行してもらい、その手形を受取った大坂の商人が指定の両替商に持って行き、代金を受取るということが行われていました。
外国為替市場とは
外国為替市場とは、「円やドルなどの異なる通貨を売買する場所」です。
外国為替は金融機関同士の間で電話やコンピューター端末で毎日取引されており、それらの取引全部を総称して外国為替市場といいます。
世界各国の主要都市に市場がありますが、特に取引量が多い、ロンドン・ニューヨーク・東京が世界の3大外国為替市場と呼ばれています。
外国為替の取引時間
外国為替の取引時間は、以下のとおりです。
- 日本時間:9時〜17時
- ロンドン時間:16時〜深夜2時
- ニューヨーク時間:深夜21時〜翌朝6時
※以上の時間は、日本時間表記です
外国為替市場では24時間取引が行われています。東京、香港、ロンドン、ニューヨークなどの証券取引所で取引される株式と違い、外国為替市場はインターネットなどで売買されるので何時から何時までという取引時間に拘束されることはありません。
テレビなどを見ていると、ニュースで「今日の東京外国為替市場では1ドルいくらで取引されていました」とか「ロンドン外国為替市場では」と報道されることがありますが、実際に取引場所があるわけではなく、さらに国ごとに時差があるため、その時間帯に中心となって取引を行う銀行が存在する都市(国)のことを指しているだけです。
具体的には、インターバンク市場では時差の関係でニュージーランドのウェリントンから始まり、オーストラリアのシドニー、アジア市場では東京、香港、シンガポール、欧州市場ではフランクフルト、パリ、ロンドンと続き、北米市場のトロント、最後にニューヨーク市場が始まります。そしてニューヨーク市場が終わることによって外国為替市場の1日が終わります。
このように、外国為替市場は週末と世界的な休日(元旦)を除いて24時間のうち必ずどこかの市場が開いており、売りたい人と買いたい人がいればいつでも取引可能なため、眠らないマーケットといわれています。
外国為替の仕組み
外国為替市場は銀行同士が通貨を売買している「インターバンク市場」と、銀行と個人や一般企業などが通貨を売買している「対顧客市場」の2つに分けられます。
インターバンク市場について
インターバンク市場では、取引したい人同士が直接取引しています。
主に以下の4つの集団がインターバンク市場の参加者です。
- 中央銀行
- 為替ブローカー
- 短資会社
- 電子ブローキング
①中央銀行
日本では、日本銀行(日銀)です。中央銀行はそれぞれの国や地域の金融政策の方針を決めています。必要であれば、市場に介入してその金融政策を実現するための手段をとることもあります。
②為替ブローカー
銀行に代わって売買の仲介を行います。為替ブローカーに仲介を頼まない場合は、自分で取引の相手を探す必要があります。
③短資会社
短資会社は、外国為替取引の仲介を行います。短資会社はコール市場や手形市場などでも仲介業務を行っています。
④電子ブローキング
コンピューターが仲介して売買します。仲介手数料が安く、人間と比べてミスもないため今では為替ブローカーより電子ブローキングの比重が高まっています。
対顧客市場について
対顧客市場では、銀行が売買を仲介し、個人や企業などと取引を行います。
主に以下の3つが対顧客市場の参加者です。
①機関投資家
膨大な資金を運用して利益を得ようとする企業のことです。生命保険会社・損害保険会社、年金や投資信託を運用する団体などの機関投資家が対顧客市場で為替を売買しています。
②商社や輸出入業者
例えば、モノを輸出する会社の場合、儲けは当然外貨(日本以外の国や地域の通貨のこと)で支払われます。
だからといって日本国内の従業員にドルやユーロで給料を支払うわけにはいかないので、日本円に交換する必要があります。
一方、モノを輸入する会社の場合、モノを輸入する際の代金の支払いは外貨で行います。手元に円しか持っていなければ、円を外貨に交換する必要があります。
③個人
海外旅行に行くときなど、銀行で円を外貨に交換してもらいます。これは、対顧客市場に参加しているということです。銀行で外貨預金をする人も対顧客市場に参加していることになります。
外国為替レートとは
外国為替レートとは、「ある国の通貨を他の国の通貨に交換するときの取引価格(交換比率)のこと」です。
このレートは、その国の経済情勢の変化や個別のニュースなどに反応して日々刻々と変動していきます。
そして、この変動する理由には中期的な要因と短期的な要因があります。
中期的な要因
金利差
一般に金利が高くなった国の通貨は上昇し、金利が低くなった国の通貨は下落する傾向があります。低金利通貨を売って、高金利通貨を買い、より多くの収益を得たいと思う人が増えるからです。
貿易収支
一般に貿易収支が黒字になると、通貨高になります。例えば日本から米国への輸出が増えると、モノをそれだけ米国に売ることになりますが、代金は米ドルで受け取ることが一般的です。
受け取った米ドルを売って、日本円を買う必要があるので、円の需要が高くなり円高・米ドル安になります。逆に米国から日本への輸入が増えると、モノを米ドルで支払う際に、日本円を売って、米ドルを買う必要があるので、ドルの需要が高くなり円安・米ドル高になります。
短期的な要因
中央銀行の為替介入
中央銀行(日本で言う日銀)が外国為替市場で通貨売買を行うことを為替介入といいます。国は自国の通貨が安くなり過ぎることも、高くなり過ぎることも避ける傾向にあり、大きな為替変動が起きた場合に、為替介入によって為替相場を安定させることがあります。
政治的要因
各国政府要人の発言などにより、為替相場が大きく変動することがあります。
経済指標の発表
市場の予想と違う実績値の発表は大きな為替変動要因となることがあります。
地域紛争・戦争
紛争や戦争が経済に大きな影響を与えると懸念された時、為替相場の変動要因となることがあります。
補足:2022年の外国為替市場の動向
現在、20年ぶりの円安が発生しています。これには日本と欧米の金融政策の違いが原因として挙げられます。
日本では日銀が大規模な金融緩和を続け、ゼロ%程度(約0.25%程度)に金利を抑えられています。
一方、米国は歴史的なインフレを抑え込むためにFRBが金融引き締めにかじを切っており、長期金利は上昇を続け、先月、3年5か月ぶりに3%台に上昇しました。
2022年1月にはおよそ1%だった日米の金利差が、いまはおよそ3%と3倍に広がっている形で、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きにつながってます。このため日米の金利差が拡大し、より金利の高いドルで資産運用をしようと円を売ってドルを買う動きが強まっています。