ビジネスシーンでよく使う用語に「トレードオフ」があります。
「トレードオフ」とは英語で「trade-off」、「何かを成し遂げるために何かを犠牲にしなくてはならない、両立できない関係のこと」という意味を持つ用語です。
「トレードオフ」は英語表現をそのままカタカナで表記した用語なので、意味の推測が難しい言葉です。ビジネスパーソンとして、正しい意味や使い方をしっかりおさえておく必要があります。
この記事では「トレードオフ」の意味、英語表現、使い方、言い換え表現、関連語をわかりやすく解説していきます。
「トレードオフ」の意味
トレードオフ
英語表記:trade-off
意味:何かを成し遂げるために何かを犠牲にしなくてはならない、両立できない関係のこと
先述した通り、「トレードオフ」の意味は「何かを成し遂げるために何かを犠牲にしなくてはならない、両立できない関係のこと」です。
「トレードオフ」は、マーケティングなどのビジネス用語、経済学などの学術用語のほか、日常生活においても使用されるマルチな表現です。
「トレードオフ」の具体例
トレードオフの具体例を、使用シーン別に紹介します。
①マーケティングにおけるトレードオフ:「品質と価格」
マーケティングにおけるトレードオフの具体例として有名なのが、「品質と価格」です。
製品やサービスの品質を向上させると、高品質を実現するためにコスト(費用)があがります。そうすると必然的に価格もあがります。
一方で価格を低くするためには、コストを低くおさえなくてはならず、結果として品質が低くなります。
②経済学におけるトレードオフ:「インフレと失業率」
経済学におけるトレードオフの具体例として有名なのが、「インフレと失業率」です。
インフレはインフレーションの略で、「物価の上昇」を意味します。
失業者を減らす、つまり失業率を低くするために財政や雇用政策を実施すれば、失業率は改善される反面、物価は上昇します。
一方インフレを抑制し物価が下降すると、企業の売上が下がってしまいます。そうすると結果として、失業率が上昇してしまいます。
「インフレと失業率」以外にも、「増税と社会保障」や「経済成長と環境破壊」などが経済学のトレードオフの例として知られています。
③日常生活におけるトレードオフ:「プライベートと仕事」
日常生活におけるトレードオフの具体例として、「プライベートと仕事」が考えられます。時間の使い方に関するトレードオフです。
1日は24時間、仕事に時間を費やした分、プライベートとして使用できる時間が減少します。一方プライベートに時間を割けば、仕事に充てられる時間が減ります。
「トレードオフ」と関係が深い用語「機会費用」
トレードオフとともにおさえておきたい用語が、「機会費用」です。
「機会費用」とは「トレードオフで選択しなかったことやものの利益」を意味します。
トレードオフで選択できなかったことやものが、「もし選択できていたら」獲得できたであろう利益を指し、トレードオフと一緒に使用されます。
「トレードオフ」の言い換え表現
「トレードオフ」の言い換え表現を、例文とともに4つ紹介します。
言い換え表現①:二律背反(にりつはいはん)
「二律背反」の意味は「本来互いに対立し両立しえない2つの命題(※)が、ともに存在している、矛盾した状態のこと」です。
例文.業務効率化のためのプロジェクト対応が原因で、メンバーの業務時間が多くなってしまうという二律背反の状態が起こっている。
※論理学で、真偽(真実か、偽りか)の判断ができる事柄。題をつける、などの意味もある。
言い換え表現②:代償(だいしょう)
「代償」の意味は、「目的や目標を達成するために、何かほかのことやものを犠牲にすること」です。
代償には他に「本人の代わりに償うこと」「損害を与えたことに対して、お金や物、労働などで償うこと」といった意味もあります。
例文.テレワーク導入により、自由な働き方が可能になった。しかしその代償として、社内のコミュニケーション不足が起こっている。
言い換え表現③:矛盾(むじゅん)
「矛盾」の意味は、「会話など話の前後のつじつまが合わないこと」です。また、「矛(ほこ)と盾(たて)」という意味もあります。
古代中国の書『韓非子(かんびし)』の句が由来とされています。
例文.彼らはもっともらしいことを言っているようだが、最初と最後で発言が矛盾しているようだ。
言い換え表現④:相殺(そうさい)
「相殺」の意味は「互いに差し引きをして、帳消しにすること」です。
ビジネスシーンはもちろん、会計や法律用語として使用される言葉です。「相殺」は「そうさつ」を誤読(※)されることが多いので、注意が必要です。
例文.昨年度はテレワーク導入によって削減できた固定費で、なんとか赤字を相殺できた。しかし、今年度は売上を上げないかぎり、赤字回避は難しいだろう。
※辞書によっては「そうさつ」と掲載されていることもあります
「トレードオフ」の例文と使い方
「トレードオフ」は、ビジネスから日常生活に至るまで、さまざまなシーンで使用される表現です。
例文1.価格と品質は「トレードオフ」の関係にある。だからこそ、高品質で低価格な製品を開発できれば、必ず注目されヒットすること間違いなしだ。
例文2.仕事は忙しいが、充実していると感じる。反面プライベートにうまく時間が割けない。やはり、仕事とプライベートは「トレードオフ」の関係なんだろうか。
例文3.需要と在庫は「トレードオフ」の関係にあるというように、状況を見て仕入れないと過剰在庫になってしまう。
例文4.学生のころは、自由な時間はあるけどお金がなかった。そして社会人になると、お金はあるけど自由な時間がなくなってしまった。お金と時間は「トレードオフ」の関係なのかな。
例文5.「トレードオフ」というだろう。何かを成し遂げたいなら、相応のことを犠牲にしなくてはならないと思うよ。
「トレードオフの」の関連語
「トレードオフ」の関連語を5つ紹介します。
関連語①:フェアトレード
「フェアトレード」は、「経済・社会的に弱い立場に置かれる発展途上国の原料・生産物を、適正な価格で取引し続けることで、その国の生産者や労働者が貧困から自ら脱せるようにする(自立)、公平・公正な貿易の仕組み」を意味します。
現在日本でも注目されているSDGsに大きく貢献する分野として注目されています。
参考:フェアトレードジャパン
[nlink url=”https://career-media.net/26427/”]
関連語②:トレードマーク
「トレードマーク」は、「商標」を意味します。「商標」とは、「法人や個人事業者、団体などが自社や自身の製品やサービスを、他社や他人のものと区別するために使用するマークのこと」です。(参考:特許庁)
「トレードマーク」と「商標」はどちらもビジネスシーンでよく目にする用語です。合わせてしっかり覚えてください。
関連語③:トレードシークレット
「トレードシークレット」は、「顧客情報や未開示の新製品・サービスに関する情報など、企業の売上や利益に影響を与える機密情報」を意味します。
「トレードシークレット」は経営学用語のひとつとして知られています。
関連語④:トレードマネー
「トレードマネー」は、「プロスポーツにおいて選手が移籍する際に、その選手を獲得した側が移籍前の所属チーム側に支払う移籍料」を意味します。
ビジネスシーンで目にする機会はあまりないかもしれませんが、日常生活の中で触れる可能性がある用語です。
関連語⑤:トレードタームズ
「トレードタームズ」は、「貿易取引契約において、取り決められるべき取引条件のこと」を意味します。
専門用語なので、あまり触れる機会がない用語かもしれませんが、「トレードオフ」の関連用語としておさえておいてください。
「トレードオフ」の英語表現
「トレードオフ」は、英語表現「trade-off」をそのままカタカナで表記した用語です。
「trade-off」は名詞で、先述の意味以外に、
- 交換、取引
- 妥協、折り合い、譲り合い
といった意味があります。「trade off」と表し、「~を交換する」という動詞としても使用されます。
おわりに
「トレードオフ」は、用語の表記から意味が推測しづらいビジネス用語です。
ビジネスパーソンとして、その意味を正しく理解し、シーンに応じて使い分けることがことができれば、自信を持てるだけでなく、周りからの印象アップにつながるかもしれません。
「トレードオフ」をしっかりおさえて、自分のステップアップに役立ててくださいね。